精神科病院に入職した始めの頃
精神疾患を持つ患者さんと、どのように関わっていけばいいか分かりませんでした
先輩ナースの関わりを見ていると、意外にも淡々と対応している先輩が多かった
です
もっと親身になって対応するのが正解なのではないか、そんな風に思っていました
淡々と対応するのは正しいのか、悩んだ時期もありました
ある程度の経験を積んだ上で、今の私の考えを結論から述べさせていただくと
淡々と対応するのはアリだと思います
もちろん、いつでも淡々と対応するべきだとは思いません
時には感情を用いて対応することも必要だと思います
だけど、基本的には淡々とした関わり方がよい考えています
今日はその理由を書いていきたいと思います
境界性パーソナリティ障害の女性への対応例
病院で働いている時、境界性パーソナリティ障害の女性が入院してきました
境界性パーソナリティ障害とは、人格障害に分類される精神疾患です
人格、いわゆる「性格」に問題があるため、なかなか対応が難しい精神疾患です
主な特徴としては
☆見捨てられ不安が強い
☆人間関係に対して、強い怒りや恐れを感じる
☆健全な人間関係を築くことが難しい
☆自分と他人の境界線があいまい
☆1人になりたくない気持ちが異常に強い
☆衝動的な行動により、自傷行為をするケースが多い
上記のような特徴があります
精神障害で入院している方の境界性パーソナリティ障害の有病率は20%とのこと
入院している患者さんの5人に1人が境界性パーソナリティ障害ということになります
参考
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/08-精神障害/パーソナリティ障害/境界性パーソナリティ障害-bpd
今思うと、病院勤務時代は、かなり多くの境界性パーソナリティ障害の方と関わっていたなって思います^^;
そんな境界性パーソナリティ障害を抱えた40代の女性(Aさん)が入院した時のことについて
淡々と対応することの重要性を認識した事例を以下に書いていきます
Aさん
「蚊に刺されました〜。どうしよう〜。かゆいーーーー」と泣きそうな声でナースステーションに来訪しました。
少し大げさな物言いでした^^;
「ムヒってないんですかー?」と看護師に執拗に痒み止めを求めてきました。
病院のため、ムヒのような市販薬を安易に使うようなことはしません。
なので、ムヒのような痒み止めは病院には置いてませんでした。
先輩看護師
「ムヒは出せないですよ。蚊に刺されただけなので、安心してそのままにしていてください」とAさんに伝えました。
それこそ、淡々と対応でした
そうすると、Aさんは、意外にもあっさり「ないのか〜」と言って、ナースステーションから去っていきました。
Aさんは良い意味で諦めることが出来たのだと思います
当時の私にとって、とても記憶に残る先輩看護師の関わりでした
淡々と対応された方が楽な場合もある
この時に、看護師がアタフタした対応していたら
Aさんは感情的に落ち着かなくなっていたと思います。
境界性パーソナリティ障害の方は、自分の思い通りに他人を動かしたいという「操作性」があって
今回のケースも自分に注目するように看護師を操作したい、みたいな思惑はあったと思うのです
だけど、その操作性に乗らずに、淡々と対応することで
Aさんにとっても気分や感情が不安定にならず、その方が楽なんだと思うのです
もちろん、支援対象者の全員が境界性パーソナリティ障害があるわけではないです
だけど
支援者が冷静に対応するからこそ、対象者が安心する
ということは、どの対象者にも当てはまることだと思います
書籍「精神科ナースになったわけ」から学ぶ
自傷行為への対応
「精神科ナースになったわけ」という本があります。
漫画なので、非常に読みやすく、おすすめの本です。
漫画で読みやすいけど、精神科病院で働くことの、リアルな場面がたくさん描かれています。
分かりやすく、また主人公のクスッと笑える描写もたくさんあり、もしよければ、ぜひ一読してみてください
この本の中で、自傷行為をしてしまう患者さんに対しての関わりが描かれていました。
最初は自傷する患者さんを前にアタフタしていた主人公でした。
目の前で自傷する患者さんに対して、どう対応すればよいか分からなかったのです。
だけど、先輩のアドバイスで、消毒液を渡して自分で消毒するように伝える対応に切り替えました。
一見、消毒液を渡すだけの対応は、冷たく思われるかもしれません。
だけど、この例においても、スタッフが冷静に淡々と対応することで、患者さんの感情も落ち着いていくことが読み取れました。
また、この本の例だと、自分で消毒をしてもらうことによって
自傷行為を自分の責任として捉えられるようになる
のだと思います
まさしく自立を促す支援ですね
淡々と対応しても
支援対象者を雑に扱ってはいけない
だけど「それはあまりにも冷たすぎるんじゃないか」という支援者の対応も見てきました
対象者の困っていることについての話を聞くこともせず
「ただ甘えているだけ」と決めつけちゃう支援者
現場慣れしすぎて、何も考えず淡々と対処すればいい、というだけの対応になってしまうのは、悲しいことですね
表面的には淡々と対応しながらも、心の中では愛情を持って、対応することが大切だと思います
淡々と対応することと、その対応の中に愛情を含めることは、可能だと思います
冷静でありながらも、心には深い優しさを持った支援者になれるように
自分も精進していきます