随想と雑記

映画 「人生、ここにあり」

 

医療とか福祉の仕事をしていると、時に支援する対象の方の可能性を低く見積もってしまう時があります
書類の仕事が多かったり、日々忙しく流れる時間の中で、支援について深く考えられなくなっちゃったりするんですよね

そんな時に初心に戻れる映画があります
私の好きな映画「人生、ここにあり」です
この映画は、イタリアの精神障害とそれに関する福祉をテーマにしています。
最近、見返す機会があったので、今日は「人生、ここにあり」について書いていきたいと思います。

 

 

映画というストーリーで、精神障害を理解する

精神障害があっても、その人らしく生きていける社会であるべきだとは思いますが
やはり障害を持つと様々なハンディキャップが生まれます

精神障害というのは、その人の人生に大きく影響をあたえるものです

 

映画は、ストーリーとして精神障害も持つ人の人生を知ることができます。
全体的な視点で障害への理解が深まるので、
映画はまさしく、精神障害の理解を深める打って付けの教材です

教科書的な知識も大切ですが
精神障害を持った人が、どんなことについて悩み、どんな支援が必要なのかを知ることは、やはり映画などの物語の方が理解が深まるんじゃないかなって思います

「人生、ここにあり」との出会い

この映画との出会いは、大学の精神科領域の講義で教員が流してくれたのが始まりでした。
不勉強な学生だったので、普通の講義はあまり集中して聞いてませんでしたが、この映画を講義で見た時は、めちゃくちゃ感動しました

この経験があったからこそ、精神科の病院で勤めてみたいと思ったし
病院の中だけじゃなくて、地域で精神障害を抱える方と関わりたいなって思えたのだと思っています

やはり、今振り返ってみても、あの授業から受けた影響は大きいし
映画などの物語を通して精神障害の理解を深めることは、意義深いことだと
自分の実体験を通しても強くそう思います

「人生、ここあり」のあらすじ

「人生、ここにあり!」より(c)2008 RIZZOLI FILM

大雑把なあらすじを紹介します。なるべくネタバレはしないようにします。

「人生、ここにあり」は2008年にイタリアで上映された映画です
舞台は1980年のイタリア。
1978年に制定されたバザーリア法により、精神科病院は廃止された。
バザーリア法とは「自由こそ治療だ」をスローガンに
精神科医であるバザーリアが精神科病院の廃止を訴え、制定された法律です。
その法律が施行された後のイタリア・ミラノが舞台となっています。

精神科病院から解放された元患者たちは、協同組合が形成されて、そこで簡単な仕事をしながら、施設の中で生活をしていました。
そんな環境。正直、病院とは変わらない生活を強いられていたのだと思います。
その組合に熱血男、ネッロが配属されるところから物語は始まります。

クラウディオ・ビジオの演じる主人公ネッロがなんともいい味を出しています。
福祉に携わる者として、このネッロの姿勢はなんとも気持ちのいいものでした。
ネッロは障害があることを理由に組合の方たちを特別扱いしません

そしていつだって、組合の方に寄り添った支援をしていました。

精神科薬が多すぎて活力を失っている方には減薬を主治医に依頼します
主治医は減薬には否定的でしたが、それでも食い下がるネッロが、とてもかっこよかったです

組合の方を特別扱いせず、いつだって、その人たちの可能性を信じていました。
だから、日々単純な作業だけをして、その日を漠然と過ごす組合のやり方に異議を唱え
みんなでお金になる仕事をしようと提案し、板貼りの仕事を受注するようになります

その後は、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、板張りの仕事も、障害をもった方々の特性に合わせて仕事を割り振り、軌道に乗っていきます

この映画の見どころ

生きる意味を見つけた組合の方々
性に対しても積極的になり、みんなでバスに乗って娼婦を買いに行くシーンがあります

性の話なので、様々価値観はあると思います
だけど、帰りのバスの中で皆んなが本当に人生を楽しんでいる姿があまりに素敵なのです!
感動と、それを見ているこちらまで嬉しくなるようなシーンでした

きっと、この映画の監督は、このシーンには思い入れがあるんじゃないかな
個人的にはそう思っています

施設の中で毎日単調な作業をして、強い薬を入れられて、生きる活力をなくしていた精神障害を持った方々
それが自分の力で稼げる様になって、人間の根源的な欲求である、性を楽しんで、バスの中で皆んなで大騒ぎ

絶望と希望の対比
あまりにも素敵なシーンで大好きです

映画を見て、自分の福祉を振り返る

自分も福祉に携わる人間として「生きてて良かった」と思ってもらえるような瞬間を
関わる方々に提供できたらいいなって思うのです

「人生、ここにあり」映画の原題はイタリア語で「Si Può Fare」
「やればできるさ」という意味だそうです

うん。そうですね。やればできるんです何事も
原題の「やればできるさ」という意味の通り、この映画は実話を元にしていますと
遠く離れた国で、福祉の現場でこのような素敵なことが起こっていたことを知れるのも、この映画の魅力ですね

可能性を諦めてしまいそうになる時はあるけれど、主人公のネッロのように
諦めず、真っ直ぐに人関わっていきたいものです。
そんなことを思い出させてくれる、素晴らしい映画の紹介でした(´∀`)