支援について

「そのままでいいよ」のやさしさ

 

私は昔から集団行動が苦手なんですよね。
運動会とか、合唱コンクールとか、そういったイベントが苦手でした。
それは今も変わりません。

そんな周りに合わせられない自分が、障がい者福祉の仕事に流れ着いたのは
自然な流れだったのかもしれません。

その理由は

スーツを着なくていいこと


少人数での支援なので、職場の人間関係に悩まなくていいこと


支援にこれと言った正解はないけれど、むしろそれが居心地がいいこと

いずれにしても
「こうあるべき」というプレッシャーが比較的少ないことが、私にとっては心地いいです。

社会に流れる「こうあるべき」というプレッシャーって
息苦しくって逃げ出したいですね。

だけど、逃げ出してしまう自分は、社会に適応できないダメなやつなんじゃないか
そんな風にも考えてしまいます。

逃げ出したい自分と、社会に適応しなきゃならないという思いの葛藤

考えれば考えるほど、頭の中がいっぱいいっぱいになって
さらに苦しむ

そんな社会の中で「そのままでいいよ」って言葉があるということは
とても素敵なことだと思うのです

私が現在働いている、障がい者グループホームでの仕事を通して
「そのままでいい」という言葉について、少し考えてみたいと思います。

 

病院では患者の希望が叶えにくい

私の社会人としてのキャリアは精神科病院の看護師として始まりました。
それなりの思いがあって精神科病院で働くことを決めたので、仕事のやりがいはありました。


だけど、例えば「散歩が好き」という患者さんであっても
簡単に外に散歩に連れ出したりは出来ず
型にはまった支援しかできないことに歯痒さを感じていました

色々とリスクがあることは承知しています。
自傷他害のリスクがある方の強制入院の場合は、もちろん外出は出来ません。
それは私も承知の上で
「もっと自由な治療が出来たらいいな」って日増しに思うようになりました。


そこで、地域で障がい者を支える、グループホームに転職を決めました。

生活を支えるグループホームの仕事


グループホームの仕事は楽しいです。
上の写真は、世話人さんが作ってくれた食事です。
私が作ったのも1枚だけあります笑

世話人が料理を作っていると、入居者さんが興味をもって一緒に味付けしたり、お皿を並べたりします。

そうやって、病院ではなく生活の場で一緒に過ごしていると
その人の個性だったり、長所がよく見えてきます


他にも一緒に散歩に行ったり、そこでぼんやり空を眺めたり、お菓子を作ったり
病院ではできなかった支援ができることに、とてもやりがいを感じています。

「そのままでいいよ」が言えるということ

病院で働くこと
障がい者グループホームで働くこと
どちらのが合っているのか、それは人それぞれですが


私は圧倒的にグループホームで働くのが楽しいです


なんで、病院よりもグループホームで働く方が合っているのかなって考えましたが
やっぱりその理由は


「そのままでいいよ」って言ってあげられることが多いからだと思うのです

「死にたい」って言葉は不謹慎かもしれないけど


病院の支援では

◎薬は絶対に飲まなきゃダメ


◎夜は眠らなきゃいけない


◎「死にたい」って言ったら自殺しないように、カメラのついてる部屋に移動

などなど
「こうあるべき」というのを押し付けなきゃいけない場面が多々ありました。

もちろん
薬飲まないと、病状が悪くなるから、ちゃんと飲まなきゃいけないし
夜はしっかり眠って、生活のリズムを整えなきゃダメだし
せっかくいただいた命なのに「死にたい」なんて言ってはダメです
生きたくても生きられない人もいます。


この記事を書いている今現在、ウクライナの戦争で無実の命が奪われてます。
そんな時に「死にたい」なんて言葉はとても不謹慎だと思います。

だけど人間、いつだってそんなに強くはいられないし
いつだって正しくいられる訳じゃないんだと思うんです

毎日飲まなきゃならない薬を、飲みたくなくなる時もあるだろうし
眠れない夜もあるだろうし
精神的に不安定になって「死にたい」と口に出してしまうこともあると思います

そんな弱音を吐いてしまう時に
「そのままでいいよ」って言葉ほど優しい言葉はないと思うのです

支援者だってキツい時はあるから

いくらやりがいを感じていても
自分も福祉の仕事が嫌になってしまうことがあります


そんな時に
「福祉に携わるなら、福祉が好きじゃなきゃダメだ!」
「やりがいを持って働け!」
こうやって言われるのは、少しキツイですね


そんな時に「そのままでいいよ」って言葉をかけてくれたら
自分はすごく嬉しいと思うのです

1対1で向き合う世界だからこそできる承認を


世の中には秩序を守るためのルールがあるし、好き勝手に生きても良い訳ではありません

ネット上で福祉に携わる人間が声高らかに
「福祉の仕事なんて嫌いです!」なんて言わない方がいいし
どんな時であろうと、誰もが見られるネット上で「死にたい」は御法度ですね

だけど、1対1で話し合っている時に
その小さな世界の中だけでは
「嫌なことは嫌」って言っていいし
「死にたい」って気持ちも、とりあえずは「そのままでいい」と思うのです

 

本来であれば「そんなこと言っちゃダメだよ」と返されることでも
「そのままでいいよ」って誰かが受け入れてくれれば

一時的に弱気になっていても、前向きになろうって思えたり


「死にたい」って思っていたとしても
「大丈夫だ。また生きていこう」
そんな風に思えるのだと思うのです。

「そのままでいいよ」って優しい言葉ですね
ありのままの全てを受け入れてくれるような言葉です


「そのままでいいよ」って言葉が、もっと世界に溢れますように


自分は福祉の仕事を通してたくさんの
「そのままでいいよ」
作っていけるように頑張ります。